
「あんたの鳥はすばらしいよ。だがね」
その先は言われなくてもわかる。
いらんと言われるのが怖くて、逃げるように店を出た。

鳥が売れないのでは生きていかれない。なぜだろう。なぜ誰も鳥を欲しがらないんだろう。あんなにすばらしい鳥だったのに。俺から鳥をとったら何が残る。この指だって他に何の役にも立ちやしない。あぁ、もう、わけがわからない。むちゃくちゃだ。いっそ死んでしまおうかしら。

バクバクバクバクばくばくばくばくばくばくばくばくばくばく

いけね。降ってきやがった。

濡れたら終いだ。まいったな、死にたいなんて冗談だよ。誰だって言うじゃないか! ぎぎぎ、いてぇいてぇ! タイム! タイム無し!? 傘ー!

「まだ入れるじゃないか。頼むよ、俺は鳥師だ。鳥はいないが、さっき空を駆けていったあの白い鳥は俺の鳥で」
結局傘には入れなかった。雨が酷くなり始めて、あたりは次第に赤く染まっていく。もう駄目だ。
…いや、あきらめないぞ。とにかく走れ。遠くへ行こう。遠くへ行けば、もしかしたら

(どこへいったって同じだ。変わりゃしないさ。ばかなやつ)


「蛇は鳥師が嫌いだ。鳥師の指先が嫌いなんだ」

「あの鳥師は正真正銘の鳥師だった。両手指の第一関節のみを曲げることができたんだ。
あの手に捕まえられると蛇はぐったりしちまうのさ。鷲の足に似ているだろう?
天敵がいなくなれば、自然と鳥は集まってくる。鳥師はそれを捕まえるだけでいい。鉄砲はいらない。仕掛けも無しだから、あいつのとってくる鳥は健康で怪我も無い、上物ばかりだった。
あの鳥は本当にいい鳥だったよ。惚れ惚れしちまう。
だがね もう誰も「良い鳥」なんか欲しくないんだ。そういう時代は終わっちまったんだよ」