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100のお題
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鳥師



「あんたの鳥はすばらしいよ。だがね」
その先は言われなくてもわかる。
いらんと言われるのが怖くて、逃げるように店を出た。




鳥が売れないのでは生きていかれない。なぜだろう。なぜ誰も鳥を欲しがらないんだろう。あんなにすばらしい鳥だったのに。俺から鳥をとったら何が残る。この指だって他に何の役にも立ちやしない。あぁ、もう、わけがわからない。むちゃくちゃだ。いっそ死んでしまおうかしら。




バクバクバクバクばくばくばくばくばくばくばくばくばくばく




いけね。降ってきやがった。




濡れたら終いだ。まいったな、死にたいなんて冗談だよ。誰だって言うじゃないか! ぎぎぎ、いてぇいてぇ! タイム! タイム無し!?  傘ー!




「まだ入れるじゃないか。頼むよ、俺は鳥師だ。鳥はいないが、さっき空を駆けていったあの白い鳥は俺の鳥で」

結局傘には入れなかった。雨が酷くなり始めて、あたりは次第に赤く染まっていく。もう駄目だ。
…いや、あきらめないぞ。とにかく走れ。遠くへ行こう。遠くへ行けば、もしかしたら 




(どこへいったって同じだ。変わりゃしないさ。ばかなやつ)







「蛇は鳥師が嫌いだ。鳥師の指先が嫌いなんだ」


「あの鳥師は正真正銘の鳥師だった。両手指の第一関節のみを曲げることができたんだ。 あの手に捕まえられると蛇はぐったりしちまうのさ。鷲の足に似ているだろう? 天敵がいなくなれば、自然と鳥は集まってくる。鳥師はそれを捕まえるだけでいい。鉄砲はいらない。仕掛けも無しだから、あいつのとってくる鳥は健康で怪我も無い、上物ばかりだった。
あの鳥は本当にいい鳥だったよ。惚れ惚れしちまう。 だがね もう誰も「良い鳥」なんか欲しくないんだ。そういう時代は終わっちまったんだよ」


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100のお題をはじめてやってみようと思ったときは、こんなかんじでテキストをつけていこうと思ってたんだけど、面倒すぎるし、 畑が違うので性に合わず一年ぐらいほっといてました。
近頃になって、ようやく100のお題を、強引にでも良いから終わらせてやる、と思いはじめてまたぼちぼちやってます。

原案はつげ義春さんの漫画です。以下内容。(かなり忘れているので脚色されている気もするけど、気にしない。全然。)


とある小さな村に鳥を狩って来ては業者に捌く、鳥師がやってきた。
鳥師の連れてきた鳥は白いサギだった。とても大きく、気品がある美しい鳥だった。この鳥師の連れてくる鳥はどれも一級だったが、この鳥は中でも一番優れていた。
鳥師は常連の鳥屋の主人のところへ鳥を連れて行った。しかし主人は鳥に心引かれながら、鳥の購入を拒む。鳥は昔に比べ飼う人が激減し、売り上げが悪くなり、主人自身、店をたたもうか悩んでいた頃だった。

鳥師はボロボロだった。どこに行っても鳥が売れなかったからだ。鳥師は背中を丸めて店を出ていった。外は雨が降っていた。

鳥屋の主人は鳥師が去った後も、鳥師と、なによりもあの美しい鳥のことが気になって仕方がなかった。主人は本当に鳥が好きだった。店に余裕さえあれば、売れなくても良い、あの鳥をおきたい、そう思っていた。
主人は鳥師を追いかけることにした。

川辺まで行くと、鳥師は高い橋の上から川を見下ろしていた。

主人には、雨に打たれてうなだれている鳥師の姿が、黒く大きな鳥そのものに思えた。
帽子の広いつばが嘴に、ボロボロのマントが羽のように見えたのだ。

これは飛ぶぞ、と主人は思った。気がつくと叫んでいた。

「飛べ飛べ 飛ぶんだあ!」

鳥師はマントを広げた。橋から空へ飛び立った。鳥師は飛んだ。鳥師は鳥だった。
主人の両目から涙が次から次へとあふれ出てくる。

「オラもつれてってくれぇ!」






数日後、川の下流の岸で鳥師の溺死体が見つかったが、主人は鳥師は鳥だったと信じている。なぜあの時、「つれていってくれ」なんて叫んでしまったのかはわからないのだが、あの鳥師は、誰がなんと言おうと鳥だった。
何が良いんだか良くわからないけど、めちゃくちゃ好きな話だった。